現在私は店舗を中心にリフォームやリニューアルの
プランニング・施工を仕事にしている。
仕事をはじめたころは、なにしろお仕事をとってこなければ
ならないわけで、それこそ建築と関係なさそうでも
「なんでもやりまっせ」くらいの勢いでやっていた。
古い小さなお店の改装などをやっていると、自然、
看板・サインをイメチェンしたい、などの要望が出てくる。
イメチェン、とは言っても古い店。ゴシック体の屋号が
スチール看板にペンキで書いてあるだけというものも多い。
これを機になんか当節風のロゴマーク作って、名刺も一新し、
スタンプカードなんかも作ってみたいのよね、云々。
「君んとこはそういうデザインもやってるの?」
・・・これはウチの本来業務とは少し違う。建築プランとCI計画は
別のものだ。
だが、なんでもやりまっせ!の頃。請けちゃうんだこれが。
そういうのもともとキライじゃないし、なにしろそのころは、
「そういうのはちょっと」って恐くて言えなかった。
これを安請け合いと言う。
これがいざやってみると、メチャクチャ大変なのだった。
お仕事なのであたりまえなのだが、お客さまの要望・希望・目的に則し
かつ、私の目ではなくお客さまの目に、引いてはその店の顧客に対して
良い印象を与うべきものを作らねばならない。責任は重大だ。
そのため、それこそ耳からシルが出るほど考えに考えて作った。
単純明解な図柄(コストや施工性に鑑み色数も考慮せねばならない)
に説得力を持たせるため、CIデザインにはトンチも必要なのだ。
以下いくつか私の苦悩の軌跡を披瀝してみよう。
とはいえ一般のお客さまのものを載せては障りがあるので、
友人である顧客のものだけをチョイスしてみた。
●案件1:精密溶接業様

もともと現在の代表のお兄さんが個人で営んでいたが、
近年若くして亡くなってしまわれた。
あとを引き継いだ弟が、兄弟の名前にある「勇・進」から
社名を名付けた。その思いを、大切にしてあげたかった。
*CONCEPT
頭文字“Y”・“S”を図案に盛り込んでみました。
上図はY・S・Wを溶接の電光にイメージして。下図はY・Sに
模した二人の人物が協同して作業する様をイメージして。
●案件2:自動車板金業様

代表はなぜかゾウをマークにしたかったらしかった。
その理由を問うてみれば「よくわかんないけど何かヨクね?」と。
世の中の社長連中には、彼のような感覚論者が多い。
「高級レストランみたいなカーサービスを目指す!」
ことが彼の目標だ。よくわかんないけど何かそういうのがヨイらしい。
*CONCEPT
元気に走る子ゾウに、トンカチを持たせてみました。
工具をシルバーに見立て、レストラン風(?)に・・・
●案件3:結婚式ご一行様

ウェディングパーティー用。案内状やウェルカムボードに
配置したり、シールにしてドラジェに貼ったりした。
都合で式を挙げるのが遅れていたが、
子供と一緒に挙げる思い出深い結婚式にしたいとのこと。
*CONCEPT
新郎新婦とお嬢様の頭文字をハートマークにあしらってみました。
愛に包まれた新しい家族の出発をことほいで。
・・・これらを考えるのにそれこそ最低でも丸一日以上は悩んだ。
試行錯誤でそれを製作し、打ち合わせし、納品まで至るまでには
とんでもない時間が掛かってしまっている。
有り難いことに皆様気に入ってもらえているのが嬉しいが、
やっぱモチはモチ屋。私には他にやらねばならぬ作業が莫大にある。
最近は業者にフるか、なるべく避けるようにしている。
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でもやってて楽しいのは事実。
以下今回の稿用に、自分と志を同じうする仲間を顧客に見立て
トンチをふりしぼりデザインをおこしてみました。
何故か仕事や課題でなく、お遊び感覚だと
瞬殺で作れてしまうところが実に不思議。
●同志のためにその1:「The Style for Ero-Oyaji」


*CONCEPT
三十代男子、微妙なお年頃。青く快活なエロさは衰えを見せ、
かといってシルバーな渋みと老練さを醸すほどの力量はない。
それでいて若いコにかまって欲しい、このアンビバレンツな想い・・・
そういう人間に得てして貼られる「エロオヤジ」のレッテル。
皆よ頑張れ、お前たちに足らぬものはセンスと思いやりだ。
イタリックに構えたスクリプト体のように、少しは慎んでみろ。
分かったか、オレ。
●同志のためにその2:「for ダメ人間」

*CONCEPT
近年流行ったホルスト“惑星”。有名な第4楽章木星ジュピター。
ジュピターはギリシア神話の万能にして好色な主神ゼウスにあたり、
ホルストも#4副題を「快楽をもたらすもの」としている。
ダメ人間の王国、その国是に掲げる高々とした理想、
「その時の快楽だけを追い求める」ダメダメな感じをジュピターに託した。
INTERNATIONALにはグローバルワイドにダメ人間を糾合せんとする
国際戦略的な意志を込めた。
説明しないと木星に見えないところが、この場合COOL(←どこが)
嵐逆巻く大気の中には惨然と輝くアイデンディティが・・・!
●同志のためにその3:「最高学府でけんちくを修めた俊才たちへ」

*CONCEPT
犬のように振る舞い、畜生のように扱われる。
何たる屈辱!!もっと汚い言葉でオレを罵ってくれ!!
そんな同志たちのカッティングエッジな主張を図案化してみた。
「犬」をモチーフに、何やら刃物のような妖しいかがやき。
そう、刀と槍だ。「剣」とホコとも言う。
ケンの刃で斬りつけ、槍の穂先でチクチクつっ突く・・・
あぁぁ、結局ダジャレかよ。
多分、斬られて刺されて傷付くのは、自分自身。
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そういえばもうすぐ4月。新入生はもちろん
新OBOGも我々も心新たに新年度。
改めまして、ご挨拶。

よろしくお願いいたします。
P.S.アップ遅れてごめんなさい。3月はキビしいのです。
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