「明日は一緒に行こうゼ」
「...ああ、いいよ。」
もともと同じ高校だった僕ら3人は、スーツ姿で集合した。
いかにも田舎から出てきました!という着慣れない買ったばかりのスーツ。今考えるだけでも恥ずかしい、オカンが「これが一番似合う!」と言って選んだ小豆色のダブルスーツを僕は身にまとっていた。
今日は武蔵野美術大学の入学式。これから始まるキャンパスライフに想いを馳せながらやってきことはやってきたのだが、少々憂鬱だった。...足が痛い。
中・高と自転車通学だった僕は「電車で乗り換えながら通学したい」と東大和市駅から徒歩12分のところに家を借りた。そこから東大和〜小川〜鷹の台と電車に乗り、徒歩15分かけて大学に通う...、そんなことを考えていたのだが、実際に来てみると
そんなことしなくても大学と自宅が徒歩20分であることが判明(笑)。結局この日もてくてく大学まで歩いてきたのだった。しかしスーツに合わせて買った真新しい茶色の革靴はかなりキツく、僕の足は靴擦れを起こしてしまっていた。...ちょっと歩くだけでも足が痛んだ。
入学式が始まるまでの間、僕、モリタ、ヒデキは少し構内を歩いてみることにした。構内のスピーカーからは武蔵美の校歌であろう曲が流れていた。
「む〜さし〜のびーじゅーつ〜、む〜さし〜のびーじゅーつ〜、む〜さし〜のびーじゅーつ〜、フレ〜。フレ〜。」・・・何とも変な校歌だ。この歌詞を覚えて歌えるようにならなければならないのだろうか?ならば今の内に少しでも覚えとこうかな...?
そんなことを真面目に考えていた。頭ん中は、まだ完全に高校生である。
入学式はごく平凡に終了。僕はこの後出たときに繰り広げられる、ドラマで見るようなサークルの勧誘がどんなものだろう...と、もう気持ちはそっちに行っていた。実際体育館を出てみると、外には大勢の人だかり...。心が躍る。各サークルの勧誘員達が紙を配りながら「どうぞ〜。ウチは面白いですよ〜」と声を張り上げていた。
「おおおーーー。大学生活のはじまりだぁぁぁ〜〜!!」もうワクワクがとまらない。
何々?防具空手??かっちょええーー!!ダニ族??なんだそりゃ?劇団ムサビ!?劇団かぁ〜。...いろいろ話をきいてみたい!!フラフラと勧誘員の方へ行こうとする。が、モリタがクールに
「ジメンジ、ひっかかるな」と制止する。彼の顔には一切笑顔はない。なんだよーと思いながら12号館の方へ歩いていくと、すぐに勧誘の人は居なくなってしまった。ちょっと拍子抜け。どこまでも追ってきて、わんやわんやのお祭り騒ぎだと思っていたのに・・・。
「どうする?」
12号館の前で3人はたたずんだ。
「もう一回体育館の方へ行こうぜ」と僕が言うと
「いや、ここで話を聞くと、強引に入部させられる」とモリタ。
「じゃあ、これからジメンジん家にでも行って飲もうぜ」とヒデキ。
静まりかえった12号館の前で、「...そうだな、そうしようか」と3人の意見が一致した時だった。
「ねえ、ちょっと君たち。」
「.....!!??」 ...そこには綺麗なおねいさん2人が立っていた。
(つづく)
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