2025/05/14 01:19
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2008/04/06 10:57
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やはり書き記しておかなければならないだろう。 桜舞い散る春だから。 私は”生き証人”なのだから。 ******************************* 「小豆」。 「あずき」と読む。「こまめ」ではない。 連想されるのは「和菓子」や「先物相場」などだろうか。 色の名前としても用いられるが、「小豆色」と聞くと、実際の小豆の褐色紫の色よりももっと白みがかったものを指すことが多いと思う。しいて言えば「さらし餡」の色といったところか。 その昔、小豆色のスーツを着た青年がいた。 私が初めて会った時も彼はその小豆色のスーツを着ていたのだが、彼はそのスーツを長らく愛用し、私にはその色がすっかり彼のイメージカラーとして定着してしまった。 彼の名は、治面地 良和。言うまでもなく、このブログの管理人である。 彼は武蔵野美術大学入学後すぐに競技ダンス部に入部した。16年経った今でも、入部当時と変わらず、彼は深く深く部に関わっている。もう彼無しにムサビダンス部を語ることは出来ないほどの、言ってみれば重要人物だ。 コレは、彼がムサビダンス部に入部するきっかけとなった時の話である。 ******************************** その日はとてもよく晴れていた。 前日に雨を降らせた雲はどこへやら。所々に残された水溜りが唯一の痕跡だった。 入部2年目となった私は、朝から気合が入っていた。入学式当日。新入部員を勧誘する日なのだ。 前もっての打ち合わせで、新3年生の先輩方から”本年度の方針”を聞かされた。 まず一つ、 「とにかく男子をたくさん呼び込む」。 そして二つ、「新入生には当部が『競技ダンス部』であることを当面秘密にしておく」。 一つ目の方針はその年に限ったことではない。活動内容が『ダンス』であることから、毎年のように男子部員の欠如は悩みの種であると先輩たちが話しているのを耳にしていた。オドロキは”二つ目”の方である。明らかに前年度には無かったことだ。私達が勧誘を受けたときは、先輩たちは「ダンス」という言葉を口に出して真っ向勝負をかけていた。 部を知る前に「ダンス」という言葉で拒否反応を示し逃げていくことがないよう、間口を広げると共に新入部員のレベルアップを図るということなのだろうと考えられた。 なぜ諸先輩方々がこのような方針を打ち出されたのか。 言うまでもなく前年度を省みての改善策であり、省みられたのは我々新2年生の在りようということになる。 我々の代は男子4人(諸田、児嶋、千原、坂梨)、女子4人(伯井、ミナちゃん、升川自由、私)とバランスよく揃っており、人数的には申し分ない。 ということは、変革の原因は人的内容ということなのか…。 我々には思い当たる節がありすぎた。ダンス部をとても愛してはいたのだが、練習や競技会に対する熱意はお世辞にも周囲に伝わる程ではなかった。良くも悪くもマイペースな代だった(特に私と男子が)。 先輩方は成績が悪い我らを一度も責めたりはしなかった。 しかし部としての現状の危機を察し、改善策を講じた。そして出された指令が、その2項目である。 今までの反省をこめて、任務を必ず遂行せねばなるまいと、私は朝から気合が入っていたのだ。 サークル棟の2階に新歓用の会場を設け、酒、ジュース、御摘み軽食などを用意する。 作業をしながら、どのようにここまで連れて来ようかと思案していた。 「競技ダンス部なんですけど~」という出だしは有り得ない。まずなんと言って近づこうか…。 先輩たちが「今日はがんばれよ!」とか「たくさん連れて来てね!」と声を掛けてくる。 竹歳さんはすれ違うたびに「男を連れて来い。とにかく男をたくさん…。」と呪文を唱えるようにささやき、大竹さんは「お前らなら山ほど連れてこれるよ。ひひひ」と意味ありげに笑いながら言っていた。 私は、この新歓ミッションにおいて殊更自分に期待を掛けられているように感じていた。もしかしたらただの自意識過剰だったかもしれない。 要はかる~く嘘をついてさらってきちまいなよ!ということだ。私は、自分が他の同期よりも”舌先三寸キャラ”に成り得るとの自覚があった。(決して普段はそんなキャラではない。と思いたい。)とにかく、普段の活動の不甲斐なさから来る劣等感を、先輩の期待に応えるということで拭い去りたかったのだ。 会場の準備が整い、いよいよ勧誘活動へと向かう。 私は同期のミナちゃんと組むよう指示された。 新入生は入学式の後、12号館でなんだかの用事があり(何の用事かは忘れた)、その後解放されるとのことである。私達二人はそこから出てくる獲物を迎え撃ち、もう二人の同期女子である伯井と自由は1号館前で待ち受けるという二段構えの戦法だ。 もう葉が出てきてしまっている桜の、花びらがちらほらと舞う中、ちょっと緊張しながら待機していると、新入生が12号館地下から出てきた。 最初の一団の中で、目ぼしい青年を見つけ、近づいていく。 「あのー、ちょっと今いい?」 話しかけると、素直そうなその青年は立ち止まり、ちょっといぶかしげに「え…いや、あの…はい。」と言った。 矢継ぎ早に、あっちの建物で新入生が皆集まって飲んだり食べたりしてるから行ってみない?とまくし立てた。 最初の一人目の彼は割とあっさりついて来てくれた。正確には、断りきれなくてしょうがなく…という感じだったのだが。会場に送り届けると急いで12号館前の現場に戻る。すぐに次の勧誘に取り掛かり、出来るだけ多人数を集めなければならない。 一回目に調子付いて、ガンガン声をかけまくる。狩り(?)の勝率は面白いほど高かった。 次から次へと新入生を送り込んでくる私達を見て、大竹さんが「お前ら本当に情け容赦ないなぁ。」と言って笑った。 私はそれをねぎらいと激励の言葉と受け取った。 我々は先輩たちから前もってアドバイスを受けていた。それによると、ターゲットは友達連れでない人、またスーツを着用している人にするとのこと。理由は、一人だと断りづらい上に、一旦入室すると帰りづらいから、そしていかにも”美大”な、自由な服装で入学式に臨むような人は、東京で浪人している可能性が高く、多少やさぐれ他人を疑うことを覚えてしまっているだろうから。初めにそれを聞いた時は、随分乱暴でステレオタイプな分析だと思ったが、実際にアドバイスどおりにやってみると確かに成功率が高い。先人の教えは聞いておくものだ。 私達二人の連係プレイもなかなかのものだった。 何か質問をしてこようものなら私が「とにかく楽しいから。マジで。」を連発。私の口撃の胡散臭さをミナちゃんの微笑でフォロー、加えて「みんな集まってるから」とか「楽しいよ~」と絶妙な合いの手を入れてくる。それでも戸惑うようであれば腕を取って「ね!行ってみよ!」と二人で連行。かなり強引であったことは否めないが、リハなしぶっつけ本番にしてはナイスコンビネーションであったと思う。 会場はどんどん新入生男子で埋め尽くされていった。もちろん私たち二人だけでなく、同期および先輩方もどんどんつれて来ている。会場が一杯になっても勧誘はやめなかった。脱走者が必ず何割か随時発生するからだ。 中には当然、そのイベントを行っている集団の所在を聞いてくるものもいたが、私は「特定のサークルとかではないから」と虚偽の説明をしていた。嘘だ。大嘘だ。でも、騙されてでもいいから、とにかく会場に来てダンス部の雰囲気を味わって欲しかった。たくさんの人が、きっとものすごく好きになってくれるだろうと思った。そして、あの時ついて行って良かったと思ってもらえる自信があった。なので、全く罪悪感は無かった。ある意味「信仰」に近かったかもしれない。 しょうがないのだ。知らない人にいきなり話しかけ拉致るなんて、普通の神経ではやってられない。疑問も遠慮もかなぐり捨てて自己完結させていたのだ。 12号館前の人出もまばらになり、私とミナちゃんはそろそろ勧誘をやめて会場に戻ろうとしていた。 サークル棟の方へ足を向けかけたその時、自動ドアが開いて3人の青年が出てきた。 それまでは”単体”をターゲットにしていたので、3人連れの彼らは完全に勧誘の対象外なのだが、私は、不思議と彼らに意識を集中させてしまった。 なぜか。 うち一人の青年の着ているスーツの色が、「小豆色」だったのである。 ダークスーツが圧倒的多数を占める中、文字通り異色な存在だ。 しかもダブル。 危険なコーディネートだった。ともすれば完全にホストである。 しかし、3人の中央に位置しているその彼は、あまり違和感なくそれを着こなしていた。 そして、とても素直そうな印象を受ける青年達だった。 「あの3人、いってみよう」ミナちゃんに声を掛けた。 「3人だけどいっちゃう?」と彼女は聞き返してきたが、あまり意外そうな口ぶりではなかった。 きっと彼女も彼らが気になっていたのかもしれない。 時間的にも最後のチャンスだ。駄目でもともとである。 (あたしら完全に逆ナンパ師だわ…)などと思いながら、彼らに歩み寄っていった。 続く。 ************************************** 私はどうも、文章を簡潔にまとめるという能力に欠けているようです。 当初は絶対一回で終わらせようとしていたのですが。不覚にも推敲する時間がなくなってしまいました。 この話は治面地良和君がテーマであるはずなのに、彼が姿を現した時点で第一回は終了です。まだ一言も言葉を発していないのにです。 そういえば「胃カメラ」のときも、第一回ではカメラが入る前に終了だったような…。イントロ長すぎにも程がありますね。すみません。 何分遠い昔のことなので、文章にかなりの私的見解および捏造が含まれているものと自覚しております。 「それはちょっと違うんじゃな~い?」と思った方、申し訳ありません。ネタに困ったライターは何をしてもいいんです。ウソです。ごめんなさい。 次回ではやっと治面地君と言葉を交わすことになります。本当の意味での「ファーストコンタクト」です。 最後に治面地君。 断りもなく題材にしてしまって本当にごめんなさい。このお詫びはいつかきっと。たぶん。するんじゃないかな…。 PR |


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