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□■ ここがヘンだよ!?日本の建築行政~その②
2007/07/26 09:26
一年程前、Aさんというお客さんの建替えについて、所轄の役所に申請に行った時の話。

A邸は風致地区内にある、80㎡ほど小さめの敷地で、西側に道路(高低差約50cm)、北側に隣地、南側から東側へかけては、北東方向にある奥のお宅2~3件のための細い通路(幅1.2m程度、高低差約90cm)となっている。
 この細い通路が今回の話題の争点となるのである。

基本的に風致地区内に建築する場合は、まず「風致地区内行為の許可申請」という申請をし、その許可が下りてから建築確認申請を行う。
この風致地区では、道路境界から1.5m、隣地境界からは1m、壁面を後退させて建物を配置しなければならないこととなっている。

これら申請に先立ち、私は事前にその役所へ相談に行った。
この細い通路の法的扱いについてである。

原則として、建物を建てるための敷地は、建築基準法で規定する「道路」に2m以上接していなければならない。(法43条。これを「接道義務」と呼んでいる)
この「道路」とは幅4m以上あるのが原則なのだが、法施行前(昭和25年)から存在する幅4m未満の道も認めている。この場合は現況道路中心線から2mのラインまで自分の敷地を後退させて、その部分を道路として提供しなければならない。(法42条2項。これを「2項道路」呼んでいる)
こうすることで、将来的にすべての道路を幅4m以上にしていくというのがこの法のねらいである。

Aさんの敷地は西側の道路が幅4m以上あり、接道義務は問題無い。
しかし、もしもこの通路が「2項道路」ならば、Aさんの敷地を東と南の2方向の面を約80センチ削った上で、さらに1.5m後退して建物を計画しなければならない。これでは、ただでさえ狭い敷地がさらに狭くなってしまい、実際家としての間取りが成り立たなくなってしまう。

相談の結果、幸いそこは2項道路ではないとの事。だがホッとしたのもつかの間、そこは「43条ただし書き」だと言うのだ。
これは、43条の接道義務の条文のあとに「ただし」と書かれたあと、安全上その他諸々上支障が無いと認めて許可したものについてはこの限りではない、と書かれている。そしてそれを許可する基準として、道路と同等の通路によって道路に通じている事、となっている。
つまりその通路は、道路と同等の通路、ということなのである。
だが、あくまでそれは通路であって、法的に言う「道路」ではないため、敷地後退の義務は無い。

以前その市内で同様の条件の案件をやった時に、一応その通路の中心線から2m後退して建物を配置するよう指導されたことがあったので、A邸もそのように計画して、数週間後に風致の申請をした。

ところがだ。申請書提出の一週間ほどした後、風致担当役人:都市計画課X氏から連絡があり、訂正事項があるので来庁して欲しいとのこと。行ってみると、

X:「この通路に面した部分、既存のブロック積みで土留めしているのですが、高低差が60cm以上あるので、当市では60cm以上はブロックでは危険なので、作り替えるよう建築指導課で指導してるんです。それに風致の方としても、通路とはいえ道路と同等なので、石貼りや石積み、若しくはそれと同様の仕上げを施したものにしてもらわないと。」

私:「いや~建て主さん予算ギリギリなので、既存のものを何とか活かしたいんですけど。もう何十年も建っていて、現況亀裂・ハラミ等も無く、設計者が安全と判断してれば良いのではないでしょうか?」

X:「それは建築指導課の方に直接相談してみてください」

そう言われ、とりあえず建築指導課窓口に行って担当Y氏に相談。

Y:「当市ではこの地域性など考慮した上でそのように指導しており、皆さんに守っていただいているので、この物件だけ特例扱いするわけにはいきません」

との事。以前この市で他の物件でも同様のことを言われたし、この事に関してはきっと譲らないだろうと推測はしていた。
一旦この場は引き下がり、ちょうど昼休みなので、外に出て民間確認検査の部長さん(以前の勤務先の親しかった先輩)にTEL。同様の相談をしてみると

部長さん:「う~ん、うちでは基準法通りに審査するしかできないから、そこは設計者が安全と判断したならばOKだけどね。」

私:「じゃあ、とりあえず作り直すことにしておいて、風致の許可を得た後、そちらに確認申請を出すというのはどうでしょう?」

部長さん:「そうされればうちは確認許可を下ろすしかないけど、ただ、行政の権限で確認差し戻し請求をされる可能性があるからねぇ・・・。でも指導とはいえ、厳密にいえば違法でない既存のものを壊せなどという権限は、いくら行政でもそれはないだろう、と俺は思うけどね。」

との事で、差し戻し請求などとなると非常にやっかいだし、ここまでは一応想定の範囲内なので、あとは作り直しの際のコストダウンの折衝だ。再び風致の窓口X氏のところへ。

私:「一応ブロックは作り直すことにしますが、高さ60cmのブロック積を新しく作って、残り30cm分は30度以下の斜面にしようと思うのですがどうでしょう?」

X:「石貼りのような仕上げのブロックならいいですけど。」

私:「風致条例の主旨として、公共空間である道路の景観を良好に保つというために、そのように道路に面する部分の仕上げ施すようにという事なのだと理解いたします。でもこの通路部分はあくまで民地であって、ごく特定の2~3件の住人しか使わないのに、そのためにこちらが仕上げを施すための高いお金を使うというのは、ちょっと納得はいかないので、普通の安いブロックにしたいのですが。」

X:「そこまで言うのでしたら、こちらもそれで許可せざるを得ないのですが、その事は審査の際の記録として書面に残りますが、それでもかまいませんか?」

脅しかよ。これでひるんでたまるか。
私:「それは公共の覧に供するものですか?」

X:「まあ、あくまで内部記録ですから、滅多なことではそのようなことは無いとは思いますが。」

私:「ではそれで結構です。」

ということで、後日訂正した申請図面との差替えを行った。
ところが、その後10日程過ぎても許可の連絡が来ない。TELにて問い合わせてみると、

X:「また例の「43条ただし書き」の件で建築指導課から待ったがかかっているので、これについて指導課Y氏から話があるので来庁して欲しいとの事なのですが。」

ふざけんな!また今さらその話かよ。だったらさっさとその旨連絡よこせよ。まったく・・・

私:「え?すみませんが、うち東京の中野なのでここからそちらまで2時間近くかかるんで、電話ではだめですか?」

X:「それは直接Yの方に聴いてください・・・」
と言って電話を切ろうとする。

私:「ちょっと待ってくださいよ。この電話をこのままYさんの方に回して頂く事はできないのですか?」

X:「少々お待ちください。」
ったく、始めからそうしろよ。役所っていつもこうだ。(必ずしも全て装だと言うわけではありません、念のため)

Y:「実は以前にもこの件に関して、建て主さんにはお話させていただいてるのですが、・・・中略・・・要は後々トラブルとならないように、まあ、これはあくまで『お願い』なんですけど、ブロック等も中心線から2m後退して作り直していただくか、近隣とよくお話をしていただきたいのです。」
この人達の言う『お願い』って、『それを聞かないと許可しないよ』と言ってるのと同じなのである。

私:「でも現に奥の家は既に建っているのですから、その確認申請の際に『43条ただし書き』の通路としての範囲が明確になっているはずです。そして現にこちらのブロックはずっとこの位置なのだから、それで問題ないのではないですか?」

Y:「いや~その時の確認申請図書が、おそらく平成12年以上前のものらしく、それ以前のものは処分してしまってるんです。ですからそちらの方で近隣とうまく調整してください。」

そんなの本当は行政側で調整すべき問題だろうし、こちらの接道は何ら問題無いのに、なんで奥の家の接道のためにこちらが骨を折らなければならないのか?単なる行政の怠慢だろっ!

その後のやりとりはかなり長くなるので省略するが、頭にきたので、こちらは行政訴訟も辞さないぞ、と言わんばかりに、このやりとりを議事録にしてY宛FAXし、その後TEL。

私:「この内容で建て主に報告した上で、また後日ご相談したいと思いますがよろしいですか?」

Y:「行政側としては、どのような文章で書かれても、それでよいとは申し上げることができない。ただ、建て主さんにこの内容で報告してもらっても特に支障は無いと思います。」

なんだそりゃ?
つまり議事録として認めてしまうと、訴訟になった時にまずいということらしい。ふふん、いかにも行政の考えそうなことだ。

長くなってしまったが、結局この後建て主さんと役所へ行き、建て主さんから、
建:「うちはもう何十年もここに住んでて、この状態で何も問題無かったのですから、このままの位置でいいでしょ?」

Yの上司:(あっさりと)「ええ、こちらとしてもあくまで『お願い』ですから♡。ご近所との問題がなければそれで結構です。」

建:「できればブロックも作り直したくないんですよ。予算無くてちょっと厳しいんで、このまま活かしたいんすよ。」

Yの上司:「60cmまでというのは『お願い』ではなく『指導』なので皆さんに守っていただいてますから、これは譲れませんが、土さえ60cm以上かかってなければいいので・・・中略・・・こうしていただければこのまま壊さなくても結構です。」


とまあ、自分達の給料の源たる税金を払っている市民と、そうではない一業者との違いがあからさまに出てしまったと言う感じである。

また、過去の経験上、家を新築する際、近隣でそれを妬む人がいることがままある。そういう人は、時には議員などを使って行政に圧力をかけ、許認可を遅らせるなどの嫌がらせをすることがある。今回も、もしかしたらそれだったのかもしれないが・・・

このような行政がすべてではなく、ごく一部のものだと信じたいものである。









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