オシムジャパンの敗退と与党惨敗のあおりを受け、またも遅刻してしまいました(←すごい言い訳)申し訳ございません。お詫びに僕がPKのボールとなりますので、どうぞ存分にラテサンのヒールで蹴り飛ばして下さい。
・・・ァハゥッ!!(恍惚)
(※以上は冗談なので誤解してはいけません)
あ〜〜、ちくしょー、ジャパン!!・・・
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限られたスペースと大量の荷物という極めて厳しい状況の中、追い打ちをかけるようにして現れた自転車。
はたしてこれを持って行けるのか?が先ず大問題なわけであるが、もしこの自転車を収納するのであれば今まで積み込んだ荷物を一旦またワゴンから出さねばならなくなる。もちろんその場合には収納効率アップのため出来る限りスクエアに積み上げてきたという私の努力もバブルに帰す。

図解すれば、こんな状況。
(※(C)夢導2007)「・・・あ〜、ロクサーヌ、これはど・う・し・て・も・必要なの?」
正直この展開に叔母も面食らっているようで、なかば諭し、なかば懇請するように彼女に尋ねた。
ロクサーヌもまたワゴンの様子を見て戸惑いを隠せないでいる。加えてここまで積み込んでしまうまで自転車のことを忘れていたことに相当申し訳なさを感じている様子だ。
「アァm、、、アィmヴエリィソーリー、、、、
・・・バッタィジャスニーディッt、bカゥz・・・」
だがクルマもバイクもなく、バスや電車を利用しようにも地理に自信がない自分にとってみてはこの自転車こそ一番確実な移動手段であり、どうしても必要なのだ、と彼女は答えた。
我々もそれはよく分かる。いかに藤沢がここ群馬よりはるかに整備の進んでいる都市とは言っても、それによって彼女の自転車の必要性は増すこそあれ減ずるものとは思えない。
これは、運んでやらねばなるまい。
・・・・
「オケー、アイシー。アイルトライイット!(←笑顔)」
私は決断した。とりあえず積んだ荷物をもう一度降ろし、彼女にとって優先すべき荷物である自転車を積み直すことにした。確かにウンザリな気分だが悩んでいても始まらぬ。英語のresolutionが決断と解決を同時に意味することと同じように、こういった場合は行動のみが答えだ。
「オ〜、オ〜、ヴェリーソゥリィ・・アリガトウゴザイマス・・・」
ロクサーヌもここにきて、我々のカインドネスに感じ入り始めたようだ。
・・・実はあとから分かることであるが、彼女は様々な事情から日本人、わけても日本の男性に対しては、良い印象を持つことができないままでいた。それを助長するかように起こった英会話教室のオーナーとの軋轢----それがこの夜逃げの原因となったのだが----も、彼女の意識に一層の暗い影を落とすことになった。不幸ななりゆきが重なりアンチジャパメンとなりつつあった彼女にとって、数少ない友人である叔母の親族とはいえ初対面にも関わらず親切にふるまう私は変わった(?)存在に見えたらしい。
この彼女の日本観については、後で述べる。
さて車外にもう一度荷物のヤマを築き、なんとか自転車をワゴンに載せた。
奇しくも「バイシクル」という言葉を逆さから読むと博多弁の「苦しいばィ」となる(大ウソ)。経験のある方はご存知だろうがいかに荷室もリアゲートも大きいワンボックス車とはいっても、自転車はあちらこちらが引っ掛かり、実に載せにくいものである。
そしてやはり載せる前から分かっていたことではあるが、車外にヤマと積まれた荷物と残された車内空間をどう比べてみても、全てを収めることはミシャン・インパッスィボゥ。トム・クルーズにだって不可能である。
・・・もぅ、どうすりゃええねん!
ここでまた、我々を救ったのはペリー(仮名)だった。
彼は困じ果てている我々を見て、荷物の一時預かりと後の輸送手配を引き受ける事を提案したのだった。「最初からそうすればいいのに」と思うかも知れないが、もともと我々が引越の手伝いをすることとなったのも、彼女に金銭的な余裕がないためである。もちろん彼もこのあたりの事情は認識しているわけだが、状況はすでにそれを許さないものとなってしまっている以上、解決の方法はこれしかない。
決して広くはないであろうアパートの部屋に先程譲り受けた家具を入れたことに加え一時にしてもさらに荷物を預かることは、ペルリにとっても迷惑なことであろうし、また同じガイジン同士とはいっても若い女性の荷物を中年の男性が預かることはお互い気をわずらわさぬものではないであろう。
彼は自分から提案する事により、そのようなお願いをなかなか自分からは言い出せぬ彼女を導き、私たちを救ってくれたのだ。輸送費までペルリが負担するわけではあるまいから、彼女もそれは我慢しなければならない。一方で我々はそもそもがボランティア。三方一両損、まさしくオトナの判断である。
あぁ、ペルリ・・・なんとリライアブルなガイであろう!
やむをえぬ、といった感じではあったがロクサーヌがペルリの提案を承けたことで、作業は再開された。引越先ですぐに必要となる荷物を彼女に優先付けてもらい、可能な限り詰め込んだ。それでも自転車を載せた事もあり、かなりの量の荷物が残された。
これを見て彼女は再び困ってしまった。
「・・・キィヨゥミィ、ハゥドゥユシンクダコスツ、イファイオゥダアキャリィァ?」(※英語かなり曖昧)
「う〜ん・・・あたしも詳しくは判んないけど2、3万円くらいはしちゃうだろうかしらね・・・」
「・・!!トゥリーサゥザンディェン!?、オゥガッド・・・」
・・・運送費がどのくらい掛かりそうであるかを叔母から聞いた彼女はマジで?とばかり天を仰いだ。実際のところいくらなのかはわからないが仮に1万円だとしても彼女にとっては相当にこたえる出費なのであった。
色を失う彼女の表情を察し、今度は意を決した叔母が助け舟を出した。
「あ〜、ロクサン、もしこの食器棚いらないのなら、あたしがもらっていいかしらね?」
「ワゥ!、ユゥテイキッ!?・・シュア!!
・・・オ〜、キヨゥミ〜、、、サンクスァロッt!」
必要性の高いものから優先的に積み込んだため、ここに余っている荷物は彼女にとってプライオリティの低いものばかり。廃棄にもカネがかかるし、運ぶのにもカネがかかる。ロクサーヌは大袈裟なほど目をまんまるにし大喜びで答えた。
「勝春、悪いけどこれ積んであたしんちに置いて来てくれない?その間に私たちであとかたずけしておくわ」
荷物の他にも自分を含め3人の人間を運ばねばならないため、今ならば席は二つ空いている。確かにまた隣街まで行って帰ってこなければならないわけだが、これぞまさしく次善の策と言えよう。
そうと決まれば、チャキチャキと行動だ。助手席を倒し食器棚を積み込み、どうせなら是非これもお願い!といった具合に追加されたいくつかの荷物とともに、私は単身叔母の家に向かった。
既に7時半近くということもあり、叔母の家には従姉妹が帰って来ていた。
「なにこれ?ロクサーヌの荷物ゥ?」満杯状態のクルマを見て従姉妹も驚いている。彼女にも手伝ってもらい、食器棚などを運び入れた。
これからやっと藤沢に出発すると聞いて、叔母とともにロクサーヌの生徒である彼女は「あたしも行きたい」と言い出した。英会話は叔母よりも堪能であろうかという従姉妹である。私だってできることなら付いて来てほしい。だが座席は既にヤネの上しか余っていない。ビジュアル的には面白いが、これで公道を疾走するわけにはいかない。引越が終わったら会いに行ってあげなさいと彼女を諭し、私はロクサーヌのアパートに戻った。
アパートではペルリに預かってもらう荷物の運び上げも掃除もあらかた終わっていた。あらためて、最後のお別れだ。彼はもういちど私たちに彼女をよろしくと言い、握手を交した。今回の引越に当って多大な役割をはたした彼。ロクサーヌにしてみれば正に大恩人である。
「オケィ、コールユゥスーン、バイフォナゥ!」握手を終えるとそのまま彼女はクルマに乗り込み、ペルリもまた見送りもせず、部屋に戻っていった。
わりと、サッパリしたものだ。不思議な関係である。
同じアメリカ人であっても、異国の地にいればお互いエトランゼなのかもしれない。
ともあれ辺りは既に夕闇。
8時も半ばを過ぎた頃、私たちは神奈川県藤沢市に向けて出発した。
to be continued.....
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次回やっと最終回(予定)。彼女の心のヤミが明らかに・・・!(予定)
今度こそ、遅刻なんてしない!(予定)
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