2025/05/14 20:13
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2007/03/13 16:42
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自分の更新日に体調を崩して寝ておりました…。 大変申し訳ありません!!!!一日遅れでアップします。 「へんないきもの」はネタが一時切れましたので(笑)、今回は自分愛用の香水 「ダビドフ・クールウォーターウーマン」を題材にした超短編小説を 発表いたします。。 あ、あと前回のコメントのお返事、遅くなりましたが書きますので!! ついでに、宣伝ですがフリッカーを立ち上げました。http://www.flickr.com/photos/7271590@N05/ ぜひお立ち寄りください。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 煙草を吸わないで、と言ったのは彼女だ。キスしたときに煙草臭いから。 雨が降り始めた。朝は気持ちいいくらいに晴れていたのに、昼過ぎにはどんどん暗くなって、ジャカジャカ降り始めた。こんなときは、俺は雨の匂いを楽しみながら煙草を吸いたくなるし、窓を無意味に大きく開けて、雨の音と雷を聴きたくなる。写真を撮られるのは嫌い、と言ったのも彼女だ。撮るのは好きだけど撮られるのはイヤなんだって。光の中でそう言う彼女は綺麗でも美しくもなかったが、俺は彼女を好きだ(と思っていた)から写真を撮った。 でも、そのうち撮らなくなった。 仕事が終わって家に帰る前、会いたくなるのは美術大学時代に仲の良かった男みたいな女友達だったり、中学のときからのバカな友達だったりして、家に帰ると彼女がいるのが当たり前だったから、俺は帰らずに仲間と飲んでいた。時々旅にも出た。そこは、煙草といい光と薄いコーヒー、ジャズがある国だった。 「彼女のこと、別に好きじゃなかったんだろ」一緒に飲んでいる友達が言う。 「そんなことはない。女らしい奴だったぞ」 「恋人に女らしさなんか求めてないだろ、お前は」 マルボロの煙を吐き出して、友達は、時に容赦なく鋭い意見を打ち返す。 この友達は、格好は男らしいくせに香水だけは甘い香りを漂わせる。それが彼のポリシーらしい。 その香りでふと思い出す。彼女も香水を付けていたのだ。 −そう、あの匂いだ。何の香水なんだろうか? 彼女の体温が混ざってオリジナルの香りになるのだ。何よりも俺の好きな匂いだった。その匂いが、感覚をおかしくさせたような気がする。だから生き方も、感性も合わないのに、俺たちは付き合いだした。暗い闇で香る、雨の匂いに似ていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ランチ時になってから、急に雨が降り出した。あたしは雨が嫌いだ。コーヒーもジャズも煙草も嫌いだ。あと、写真を撮られるのが嫌い。コーヒーは苦いし煙草はくさいし、雨は髪が湿気でごわごわになる。仕事も大嫌いだ。 そんなに嫌うものが多くて困らない?と昔の男が訊いたことがある。あたしはその男も嫌いだった。でも1年も同棲しちゃった。 「だから何でそんな男と住んでたの?あんたに全然合ってないじゃない。 いきなりドイツに行ったり変な写真撮ったりしてたんでしょ? そういう男には、美大出身とかの変な女子が合うのよ」 同期の営業課の友達が、パスタをつつきながら言う。 BLTサンドとアイスティ(これは数少ない、私の好きなものだ)を食べながら、どうしてだったのかな?とふと思う。窓の外では雨が勢い良く降っている。人々が走り、空が光る。 そうだ、香水だ。 ウォーター何とかという、青い瓶の香水を付けていたことがある。名前の通りちょっと澄んだ水のような香りで、一時期好きだった香水。 付き合う前の頃、彼が付けていたトルコ石の指輪が、その香水の香りと合う気がしたのだ。ただそれだけ。波長が合うって言うのかな。そんな気がしただけで、私は彼と付き合った。彼は急に旅行に行ったり、騒がしいジャズを大音量で聴いたり、写真を撮ったり、フリーのデザイナーとかいう自由奔放な仕事をしていた男だった。自由奔放。嫌いな言葉だ。 今はその香水もやめた。私の嫌いな雨のときに、強く香ることに気付いたから。 彼の指輪のトルコ石の青色を、ふと思い出す。あの色も嫌い。 雨はしばらく、やみそうにない。 PR |


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