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□■ 負の遺産
2006/12/31 01:36
 年末のどさくさで高校時代のネタ帳をみつけた。
 ネタ帳というより、授業中にみんなで回し読むためのらくがき帳と表現した方がいいかもしれない。結構な厚さのノートに、いろんなやつのマンガや雑文がぎっちり書かれている。中身の詳細は記憶にない。しかしわざわざ上京とともに持ってきていることから、実家に残しておけない破壊力をもつブツだと想像はつく。
 清らかな気持ちで改めてじっくり読んでみた。
 さすが高校生、これでもかというくらいにエロとグロのオンパレード。
 真面目に書かれているのは関西人でありながら大洋ファンだった俺と、近鉄ファンだったO野という奴の「夢の日本シリーズ 大洋−近鉄」という架空対決くらい。現在、両球団とも存在しないのが涙を誘う。
 そのO野による連載マンガ「ウ○コマン」は秀逸だ。毎回悪の限りを尽くす主人公・ウ○コマン(風貌はおそらくあなたの想像通り)が全ての話のオチで「わーん。自分のウ○コ踏んだよー!」と泣いている。いろいろ考えさせられる。切り口を工夫すれば道徳の教科書に載ってもおかしくないだろう。
 また、叩き殺した蚊をセロテープでいくつも貼り付けた「俺に挑んできた勇者たち」のコーナーなど特殊企画が盛り沢山で、病んだ青春時代だったことを示す貴重な資料だ。

 ノートの中盤にエロ小説があった。
 中心になって書いていたのは俺なのだが、続きを書きたくなったやつが好みの展開を随時足していく、というルールが自然発生していた変則小説だ。ただ、内容はきれいに忘れている。
 タイトルは「フラワー 〜flower〜」。
「病院や霊園のそばには花屋がある。あの娘は晩秋の柔らかい夕陽のなか、静かな光を放っていた。僕はすこし離れて彼女を眺めるのが好きだった。手が届かないくらいの距離、息がかからない距離、命の温度が伝わらない距離、そう決めている。死の隣には花がよく似合う」
 という、然るべきカウンセラーが読めば「明らかにSOS信号です」と判定しかねない迷走状態の冒頭部から、思いっきり矛盾しているのに無駄に気合を入れてデザイン調の筆記体で書かれた締め言葉
「Fin −つづく−」
 まで、かなりのページにわたって全体的に耳から変なシロップが垂れ出てきそうな赤面文章が並んでいる。
 大筋は主人公カップルを軸にして進んでいき、途中いくつかヌルいイベントが発生する。そしていよいよ一線を越えるかという場面にきて、
「そのとき突然、紺野美沙子に似た姉が部屋に入ってきた」
 俺とは異なる筆跡で書いてあったりする。「この字はS藤だ。紺野美沙子か。時代を感じるなあ。安易にアイドルを出したりせずに紺野美沙子をチョイスしたS藤に乾杯」と、しばし一人ぼっちの同窓会。そこからは不測の登場人物をなんとか物語に馴染ませようと努力する俺の孤独な戦いが綴られていく。
 更にしばらくすると、
「昼ドラのなんとかの嵐の女優にすごく似ていると評判の姉も入ってきた」
「女優の名前を思い出した。確か高木美保だ。偶然にも姉の名前も美保だ」
 また誰かの字で書いてある。「これはY本の字だ。高木美保か。時代を感じるなあ。今やよく分からないタレントになってるけど、当時はきれいな女優さんだったもんなあ。なぜか昼ドラに詳しいY本に乾杯」と、またもやセルフ同窓会。そして物語が破綻しないように俺の奮闘が再開する。
 こんな流れで回覧経路にいるやつ好みの姉、妹、同級生、近所のお姉さん、若奥様などがわらわら増えていく。石油王並みのハーレム状態に収拾がつかなくなり、数名は別室に移動させたりするのだが、ついに、
「史上最強の助っ人、阪神タイガース ランディ・バースが入ってきた」
 誰が書いたのかはわからないが、このあたりで当時の俺も匙をブン投げたようだ。ラストでは主人公カップルが「ありがとう、みんなありがとう」と泣きながらバース、ポンセ、ブーマー、デービスなど、あの頃の助っ人外人たちに胴上げされている。
 結局「フラワー」らしきものについて触れているのはプロローグのみ。
 しかしこんなイレギュラー連発の劣悪環境で、曲がりなりにも最後までよく書き切ったものだ。よっぽど楽しかったんだろうな。

 以上のように、物語的には官能小説といえるかどうか疑問が残るものなのだが、思いのほか面白く読むことができた。
 というのも、話の進め方や細かい描写が個人的ツボを100%押さえているのだ。予想は裏切りつつも期待は裏切らない絶妙の展開。内容をすっかり忘れているのが良い方向に作用した。
「そう! そうこなくっちゃ! エロい! エロいよ! さすが俺!」
 と、唸りつつ頬が緩むといった具合。
 そりゃ朝から朝まで発情しているような高校時分の劣情カテゴリにおける
  〜 ♪こんなこといいな できたらいいな
         ♪○○○を自由に○○たいな 〜
 を文章上とはいえ自身で具現化させているのだから当然といえば当然なのだが、思わず拳を握りしめた。
「良いものは時代を越えて良い!」
 はたまた
「おいおい、このプレイはいくらなんでも無茶すぎるだろ。昔の自分のことだから考えはわかるが……」
 という、常人からは理解と賛同を得難いであろうマニアックな部分にアンダーラインや蛍光ペンが引いてあり、「わかる!」「俺もこういうの好き」と心強い倒錯性癖同志たちの文字。思わず拳を握りしめた。
「俺は一人じゃない!」
 とにかくこのネタ帳、今年最後にして最大の思わぬ発掘だった。
 ありがとう、高校時代の友。
 ありがとう、高校時代の俺。

 思い出話にのせ、具体的お下劣表現を巧妙に避けながらも非常に高尚かつ知的な青年心理学論をグダグダに披露してみました。一年の膿を絞り出すという意味では大晦日にふさわしい文章だと確信しております。
 というわけで「フラワー 〜flower〜」はじめその他の個人的な負の遺産は、不慮の事故に遭う前に抹殺処分しておきます。
 さよなら、ドラえもん。
 さよなら、2006年。
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