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□■ Bourbon Street Lullaby
2007/04/28 13:30
こんにちは、Izumixです。朝からおなかを壊しました。う〜ん。
なんか変なものを食べたかなぁ。。

昨日、新宿のジャズバーで大野雄二(ルパンの音楽をやっている
ジャズピアニスト)さんのトリオを聴いてきました。
最っ高でした!!ジャズはやはり生に限りますね。

さて今回も「ジャズ小説」で行きたいと思います。
前回の小説の、「男と女」の昔の(恋人になる前の?)話です。
前回はマイルス・デイヴィスの名曲でしたが、今回はその大野雄二の名曲です。
この曲、モダンのマッシモ組が01年頃のスローで使っていたことがあるんです。
だからきっと、聴いたことがある方も多いのでは??

ではどうぞー。

あっ!前回のコメントありがとうございました!レスこれから書きます!

*************************************

桜は散った。瑞々しい若葉が顔を出している。
男は地面に目を落とす。道は花びらで埋め尽くされていて、その上を自転車が通った跡が残っている。まるで雪がうっすらと積もっているようで、男が自分の吐く息が白く曇る気がした。

「こんな日だった気がするなぁ」男がつぶやく。
「何がです」女が顔も向けずに返事をする。
「あれだよ、僕たちが初めて・・・」
「それは冬です。この季節じゃないわ」
「雨が降っていたっけね?」
「雪よ」女はため息をつく。
「本当にロマンのかけらもない方ね、忘れてしまったの?」
ああ、だからこの雪のような道を見て思い出したのか、と男は思う。


冬の、誰もが長いコートとマフラーを着込むような寒さの頃、
男が、バーボンストリートという通りを歩いている。コートに手を突っ込み、雪がちらつく中を歩いている。
道の両側にあるバーの、オレンジの光が石畳を照らす。
男の吐く息は白く煙る。

煙草を煙らす女がいる。男を待っている。
気だるい音楽に、黒ビールをテーブルに載せて、くわえ煙草で座っている。煙草に口紅の跡がつく。

男と女はお互いを知っている。
男と女はいつも別の方向を見つめている。が、どこかでお互いはお互いと向き合っている。
ふたりは少し距離を開けて歩く。
会話は途切れ、また始まり、また少しの沈黙が流れる。
ふたりの間に暴れまわるのは冬の風と、目に見えない群青色の光である。
それぞれの家へ帰ったときはいつも、夜中を過ぎ、眠ろうとするときに、ふと思い浮かべる何かが、二人の間でまた群青色の光になる。
それに気付くのは、音もなく闇に降る雪。彼らは、それぞれの灯りを消して眠る。その一瞬の青い光が、何よりも美しいものだとは気付かない。

バーボンストリートの夜は過ぎ行く。

「だが俺は迷っている。この先の未来が、二人にとって良いものなのか否か」
「そんなことはあとから考えれば良いのよ」女はまた煙草を呑む。
「しかし−俺はもう30になる。余計なことはしていられないのだ」
「私が余計なものだというの?」
男は黙る。相変わらず雪が、音もなく散らついている。

女が沈黙を破る。
「そんな迷いは−これで解決するのではない?」
そう言った女は男の胸に手を当てる。雪と同じように音もなく、気配もなく顔を近づける。
男の目には、女の赤い唇だけが映る。
女の唇は男の唇を柔らかく包む。その2つは形を無くす。
影が重なっているその間、雪も、石畳に映るオレンジの光も、
ゆっくりと過ぎて行く。重なる影だけが、時を止めている。

—ふと、どこからかピアノのジャズが聴こえだす。
トリオであろうその音は、降る雪と同じ速さで流れ出している。
時を止めた影は、その音でまた動き出す。

女が唇を離したとき、男の唇には口紅の後が線を引いている。
影の中で、それだけが色を帯びていた。

ジャズは、群青色の光の間をふらりと抜ける。
光はそれきり消えてしまったが、男と女は、こうして始まったのである。

バーボンストリートの夜は過ぎ行く。


'Bourbon Street Lullaby' From [LUPIN THE THIRD JAZZ the 2nd ]By大野雄二
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コメント
いいよね〜〜。大野雄二。
ほんっとこの人のJAZZ、素晴らしいと思うよ。ルパンはもちろん、その他色んなアレンジも大好き。

でもまだ生で聞いたことないんだよね〜。
どっかのJAZZバー行くば定期的にやってるから聴けるんだよね??...聴いてみたいナァ。

しかし、今回の小説もカッコイイね。
大野雄二の曲にピッタリだと思うよ。(^_^)
【2007/04/29 02:24
WEBLINK [ URL ] NAME [ じめ #92c65d92ac ] EDIT
お洒落。
私とかだとこう言うの読むと普段脳の中のぜんぜん使ってない部分が刺激されるようでいいですね。いや普段から使えよ。

恋人同志(?)の今、の前回の、2人のことば遣いと、今回の昔の2人のことば。
その間に流れた時間が感じられて素敵。
【2007/05/01 19:08
WEBLINK [ ] NAME [ もろ #5498df59d5 ] EDIT
>Jimeさん
じめさんも大野雄二お好きでしたか!素晴らしいですよね〜。
私も、ルパン以外のジャズも凄く好きです。
先日のライブでは「The Look of love」なんかもやりましたよ。
ライブは、毎月最後の金曜に新宿のJというジャズバーでやってますし、
他にも大野雄二公式HPにスケジュールが載ってますよ。
私は新宿Jには毎月行きたいと本気で思ってます(笑)
いつかバーでお会いしましょう。

>もろさん
ありがとうございます!
私も普段使わないところを使って書いてます...
こういうのは妄想の産物ですからね!(笑)
しかし、時間軸やら季節感やらをだすのは難しいですね〜。今回結構苦労しました。
そしてかっこつけすぎました(笑)

【2007/05/02 22:22
WEBLINK [ ] NAME [ izumix #5494f43591 ] EDIT
いいもの発見したよ!しっとりしたジャズが好きならここのインターネットラジオがおすすめ。

KPLU88.5 JAZZ24<http://www.jazz24.org/>

クールなジャズが24h無料で聞き放題。

Bose Monitor M3とか真空管アンプなんぞPCに繋いで聴いたら脳みそ溶けそうな予感〜〜。

ここのブログも参考になるかな?<http://roberto.blog.drecom.jp/category_2/>
【2007/05/04 19:34
WEBLINK [ ] NAME [ カワイ。 #9b1d3f1bc7 ] EDIT
>カワイさん
KPLUは会社でも家でも良く聴くんですよー!
すごいカッコいい選曲ですよね。
英語リスニングにも役立つし、良いですよね〜!
でも、たまに知らない良い曲を流してても、英語だから
題名やらミュージシャンが聞き取れなかったりします。笑
【2007/05/06 09:27
WEBLINK [ ] NAME [ izumix #549525d3a6 ] EDIT
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