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□■ 胃カメラ体験記:ファイナルエディション
2007/01/23 09:00
目に留まったのは、胃壁にある小さなコブだった。

検査前には、胃炎か、あるいは軽い潰瘍ぐらいでありますように・・と考えていたのだが、モニターに映ったのは「得体の知れない何か」。
とてもショックだった。


胃炎というのは、いわゆる胃内壁の表面の炎症。荒れてしまっている状態である。

体の表面に置き換えてみる。

「お肌が荒れてヒリヒリしちゃた!」

「お肌に何だか分からないコブが出来ちゃった!」

後者の方が断然不安だ。



ところが、鼻毛医師がコブに気付き、カメラを後退させてコブにピントを合わせるようにすると、コブだと思っていたソレは意外に小さく、「イボ」くらいのもののようだった。
「あー、ポリープ(良性腫瘍)があるねぇ。」
医師は言ったが、良性と悪性の見た目の差を知らない私は、疑いの眼差しを医師に向けてしまう。
ここでこそ経鼻内視鏡の利点を活かさねばなるまい。よし、聞いてみよう!
「あの、先生、これはホントに良性・・」
「うん!良性。これは良性の腫瘍だよ。」
自信がみなぎっている。ちょっとほっとはしたものの、やはり念には念を入れて検査をしてもらいたい。
こちらの不安を知ってか知らずか、鼻毛医師は「一応取って調べておこうね」と言った。
そうそう。取って調べてくれなくちゃね。
取って。

・・取って?

またまた不吉なことを言う鼻毛医師。取るってどうやって。
しかしその時の私は、それまでの短い時間にいろんな事がありすぎて、気持ち的にキャパシティーオーバーしていた為、身に降りかかる事を具体的に想像することが出来なくなっていた。
もう何をされてもいい。というか、このイボこそが諸悪の根源。災いの権化。おまえのせいでつらい目に合わされていたんだコノヤロウ!そんな忌々しい奴を、検査中に取ってくれるというのだから、幸運だと思わねばなるまい。

それからの鼻毛医師の動きはスピーディーだった。
手元の操作部を動かすと、いきなりモニター内のイボに向かって、画面下方から藍色の液体が吹き付けられた。おそらく内視鏡先端部の穴から発射されたものだろう。
後の調べでわかったことなのだが、この液は「インジゴカルミン」というもので、食用色素の一種である。液体が腫瘍のくびれ部分に溜まることで、その形を明確にする役割があるそうだ。
粘膜の世界に突然現れた真反対色。
いきなりのことにびっくりしていると、医師は今度は操作部から何やら長い長いアンテナのようなものをどんどん差し入れていく。するとその棒は内視鏡の中を通って、同じく画面下方から先端がにょっきり現れた。

そしてイボの手前で先端をパカッっと開いた。

その姿はタイムボカンシリーズの「びっくりドッキリメカ」的なロボットアームを彷彿とさせた。

内視鏡

鼻毛医師は器用にそのアームを操作して画面中央のイボを先端で挟み込み、しっかり掴むとギュイーンと引っ張りあげた。

せ、先生!そんなに引っ張ったらそんなに引っ張ったらあぁーーっ!!

ぶちん。

ちぎっちゃった・・。

ま、しょうがない。予感はしてたのだ。取るって言ってたし。でも不思議に痛みはまったく無い。
ちぎり取られた後の胃壁は、多少血が滲んでいたがそれはすぐに止まった。医師はアームをすばやく引き抜き、先端で掴んでいるイボをフイルムケースのような物に入れて看護師に渡していた。

あの細い先端の、そのまた小さな穴を通ってこれるのだから、イボは本当に小さな物だったのだろう。あんなにでかく見えたのに。
しかし不思議だ。ちぎられても痛くないなんて。では、私の、今までの胃の痛みはなんだったんだろう。何が痛みを引き起こしているのか。

カメラは胃の中を動き回り、隅々まで調べる。するとイボはまだあった。あちらこちらに計3っつ。
医師は「他のも取って調べようね。」と言って同じ作業を繰り返した。


正直疲れてきた。
イボを取るたびに、胃をギュイーンとつまみあげて「ぶちん」とちぎる感触がしっかりと感じられる。「おぅっ!」とうめき声を上げそうになるくらいだ。
画面でその映像を見ているのもツラい。
痛くないのに、映像はとっても痛そうなのだ。見たくないのに見ずにはいられない。また、時折胃の中に送り込まれる空気が苦しくてたまらない。だんだん耐えられなくなってきた。早く終わらせてほしいのに、イボはきちんと取ってほしい。
とてつもなくワガママなボディー&ソウル。

生々しい衝撃映像の連続で次第に動悸がしてきた。
すると、心臓は胃の真裏にあるので、その拍動が胃に伝わってくる。拍動はどんどん早まり、まるで胃が心臓そのものかと思われるほどバクンバクンと動き出した。

医師が数えて3つ目のイボを掴もうとしたが、拍動が大きすぎて狙いが定まらない。4回ぐらい空を掴む。
「いやぁ、ツラくなってきちゃったのかな。ちょっと息をとめてみようか」と医師。言われたとおりにしたが、息を止めても心臓が止まるわけではないよ先生。
イボに狙いを定める鼻毛医師。(頑張れ!頑張れ!)と声無き応援をする私と看護師(多分)。さらに3回くらい空振りした後、なんとかイボをキャッチし、すばやく引き抜きケースにin。

手こずってしまったことで明らかに医師は疲れていた。でも、残すは後一つ。
すると鼻毛医師は口を開いた。
「いやぁ、まあ、ね、」
なぁなぁ的な口調に不安を覚える。
「別に取らなくっても大丈夫なものだから、ま、今日はこれでよしとしましょう。」

えぇーっ!
取ってくれないの?!検査だから?
これが不調の原因だったんじゃないの?
ショックを隠し切れず「あの、全部取らなくていいんですか?」と聞いてしまった。
医師は「うん、検査に回すのは3つで十分だよ。」という。
あくまで悪性の腫瘍かどうかを調べるためだけの切除だったのか。治療ではなく。

でも先生!その最後の一つが「ジョーカー」だったらどうするんですか!?完全セーフだと言い切れますか?もしかしたらあたしの人生変わっちゃうかもしれないんですけどあなたのせいで!!

しかし、悲しいかな、美容師にすらシャンプーのすすぎ残しを申告できない人間である。その思いは口から出ることはなかった。
心の叫びは医師に届かず、入れるときとは比べ物にならない速さでカメラはズルズル抜かれていく。
モニター映像はさっき見た映像の超高速”逆”回転。フィニッシュは粘膜→鼻毛→漆黒の闇→恥ずかしい顔のフェイドアウト・・。


不安な気持ちを残しつつ起き上がろうとすると、鼻毛医師はおしぼりを手渡してきた。あらまぁ親切に・・と思っていたら今までしたことの無いような巨大なげっぷが出た。うわ!なんだこりゃ!
ひったくるようにおしぼりをつかみ口に当てたが、止め処なく出てくる大量の空気。
検査中に入れた空気が逆流してきたのだ。医師に勧められトイレに駆け込む。
げっぷに混じって何だか液体も出てきた。おしぼりには鮮やかな藍色の液が付いている。さっきのあの液だ。
げっぷはなかなか止まらない。しばらく咳き込んで鏡を見ると、藍色が鼻から口から垂れている。怖い。昨夜の寝不足もあり目の下にはクマ。洗面台に手をつき、立ち尽くす。
カメラと一緒にタマシイまで抜かれてしまったかのようだった。

放心状態のまま診察室で次回の来院日を聞き、胃薬を処方されて、そのまま会社へ。
仕事中は努めて平静を装おうとしたが、麻酔の切れた鼻の奥は激しい鼻炎状態になり、一日中くしゃみが止まらなかった。


一週間後、鼻毛医師のもとを訪れると、
「この間はお疲れ様でした!」と元気なご挨拶。そうですよね。お互い疲れましたよね。

医師は、検査結果は異常なしで良性の腫瘍だったこと、ついでにやってくれたピロリ菌の検査の方も陰性であったことを教えてくれた。
一安心しながらも、いろいろ気になっていたことを医師にぶつけてみる。

「あの、胃の調子が悪かったのは、あのポリープのせいだったんじゃないんですか?」



ハミー2
「うん、それは関係ないね。」



「はぁ・・じゃぁ、何が原因だったんですか?」




「うん、こないだ見たけど、胃の上部が多少荒れていたからね。多分そのせいでしょう。軽い胃炎です。」




確かに、もらった薬を飲んで、かなり調子は良くなってきていた。


「あのー、・・残ったポリープが今後悪性になることはないんでしょうか?」







「ないね。まずないよ。」




「ほんとうですか?」





ハミー2
「うん!大丈夫だから安心して!」














まったく信憑性がないんだよ先生。

















それ以上医師に食い下がることは出来なかった。

帰り道々、強く思った。
この先、何があっても、この医師からガン告知は受けたくないと。









あのね・・えーっと・・・・ガンです。








ま、告知のために鼻毛のお手入れされてきてもなんなんですけどね。




                              おしまい。
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