2024/04/26 13:09
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2008/11/06 19:49
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これはイジメだ。 悪質なイジメだ。 なぜだ。彼ら(A、B両氏)に恨みを買うようなことがあったろうか? どちらかというと、ワタシの方が彼らを恨むネタを持っているような気がするのだが。 (依頼しておいた作品の半分も出来ていないのにトンズラかまされたりとか。) 何しろ、このスーツがいけない。よりによって淡いグレーだったりするもんだから浮きまくりでいたたまれない。 部屋中のメタリック&ダークネスな皆さんから、残念そうな眼差しを向けられているような気がする。 今の自分よりももっといたたまれない状況を考えてみる。 体操着で披露宴会場。ボンテージスタイルで運動会…。 いやいや、このハジケきっていない、中途半端なスーツ姿なのがいたたまれないのだ。 下を見て己を慰める作戦は失敗に終わった。 とにかく、ワタシは薄暗い部屋の中で立ち尽くしていた。 しかしただボーっと突っ立っていてもしょうがない。どうやら「穴あけ待ち」の人は、部屋の周囲を時計回りに列をなして待機しているらしい。大枚はたいた(?)ピアスを無駄にしないため、ワタシもその列の最後尾につく事にした。 部屋の中程は、ピアスやその他アクセサリーや小物などを陳列してあるテーブルがいくつか置かれてあり、何人かの客が所々にある椅子に腰掛けて談笑していた。 断頭台にも等しい”穴あけ処置エリア”は、部屋の前方、学校の教室で言えば教壇のあたりにあり、左右に区切って2箇所同時に行われていた。 客用と処置人用の丸椅子が2つずつ。処置人は2人ともレジにいた人と同様、ロン毛でタンクトップ、多分穴だらけである。 そしてなぜか、不思議なことに彼らもとても人当たりの良さそうな印象なのであった。 それぞれのエリアは、病棟の大部屋にあるようなレールカーテンで目隠し出来るようになっていた。 処置中は人に見られないようにしてくれるのか…?と思いきや、両方ともカーテンを開け放したまま客を椅子に座らせ穴あけに取り掛かろうとしている。 向かって右側では、処置人が若い女性の客に何やら話していた。どうも耳に開けるらしい。客が自分の耳を鏡で見ていた。 左側に目をやると、そちらもかなり若くてショートカットのボーイッシュな女性。ちょっと垢抜けない感じが可愛らしい。 彼女は鏡で「べぇ~」っと自分の舌を見ていた。 舌に穴を開ける気だ。 「ドキン!」と心臓が高鳴った。 (痛いよ!絶対痛いよ!だって舌ってスッゴク分厚いよ!!)必死で彼女に念じてみるが、それも無意味なことにすぐ気付く。 彼女の顔は、期待と好奇心と緊張で、明らかに紅潮していた。 ワタシはと言えば、目の前で、いきなりオペが始まってしまったくらいの動揺っぷりだった。 視野がきゅーっと狭まって、処置エリアだけしか見えないような感じすらした。 そうだ。ここはそういう場なのだ。 体に傷を付けるために、皆来ているのだ。 ワタシも、である。 彼女の成り行きに、目が離せなくなった。 彼女は渡された使い捨て手袋を両手にはめ、右手に、私が買ったのより恐らく太い医療用の針を、左手に小さなコルク栓のようなものを持っていた。 どうも、彼女は自ら穴を開けようとしているようだ。 舌に?自分で? さらに動揺してしまうワタシ。 彼女は鏡で位置を確認し、舌のちょうど中央あたりに狙いを定めて、針の先端を垂直に突きつけた。 そして針が突き抜けるであろう舌の裏側に、コルク栓をあてがった。 処置人が「じゃ、いってみよっか。せぇの!」と声をかけ、 彼女も針を持った手に力を込めようとするが、なかなか踏ん切りがつかないようで、「あー、じゃもう一回、せぇの!」を数回繰り返した。 バンジージャンプ的なシチュエーションである。 そりゃぁそうだ。あんな、素朴な彼女がいきなり「グッサァー!」なんて突き刺せるわけがない。(←あくまでも主観) ワタシは「せぇの!」のたんびに(ひぃいいい~!)と声にならない叫びを上げていた。縮み上がる思いとはこのことだ。 でも目が離せない。 ここは、あくまで自分で穴を開ける場所なのか。彼らは処置人ではなくただの応援団なのか。自分で開けるなんて、ワタシには絶対無理な話だ。 すると、彼が微笑みながら「もうムリ?ダメ?」と彼女に尋ね、彼女が彼を見上げ舌を出したままコックリ頷くと、彼も頷き「シャー!!」と勢いよくカーテンを閉めた。 彼はやっぱり"処置人"だった。 カーテンの向こうから、「ハイじゃ行くねー。」という、処置人の声が聞こえてきた。 どうやら、穴は彼の手によってあっさりと開けられてしまったようである。 しばらくするとカーテンが開き、彼女は顔を赤らめながら出てきた。一緒に来ていたらしい友人に、舌を出して銀色のピアスを見せていた。友人の女性は羨ましそうな歓声を上げた。 ワタシは大きな溜息をついた。 一連の成り行きを見て判った。 他人の体に傷を付けるのは、言うまでもなく医療行為か傷害行為のどちらかだ。医師免許の無い人が穴を開けたら傷害の罪に問われてしまう。この店は、表向きは「自分で開けるのをサポートするだけ」なのだ。カーテンを閉めるあたり、違法性の認識が一応見られる。 入れ替わり立ち代り、客が処置エリアに呼ばれていく。 呼ぶ時は「ハイ次、鼻の人~」とか「ヘソの人~」とか、開ける場所で呼ばれている。客はあらかじめどこに開けるかを告げてあるようだった。 なので、呼ばれた人がどこに開けるのかが判る。 人によって、自ら針を刺す剛の者もいれば、端から処置人に依頼する者あり、カーテンが閉まっていない時はこちらも釘付けになって見てしまうのだった。 ワタシが並び始めた時には、既に20人以上の客がいた。 徐々に列は進んでいくものの、当然スローペースである。見物する事にもだんだん疲れてきてしまい、ふと商品などを購入したときに手渡された2枚のプリントに目をやった。 プリントはA4くらいのサイズで、タブロイド紙のように重ねて二枚折にしてあった。 一番表紙には様々な形のピアスを紹介してあり、また穴あけ後のケアの仕方などを細かく説明してあった。 中を開くと、そこに書かれていたのは衝撃の内容だった。 ボディピアッシングの、位置と名称がズラリと記されていた。しかも各部を拡大した詳しいイラストつきで。 ネットで検索すれば、およその内容はすぐに知ることが出来るのでここでは記述を控えるが、とにかくとにかくそのイラストは痛そうで見ていられなかった。 また、そのバリエーションの多さに驚いた。 共通して言えるのは、(痛そー!)と思うところが開けるポイントとなっているところだ。 特に、いわゆる"デリケートゾーン"における種類は多い。女性、男性共にだ。 次のページ以降はさっと目を通すだけにした。 内容は、タトゥー、インプラント(体に金属など異物を埋め込む)、スプリット(体に切れ目を入れる)など、ピアス以外の身体改造方法を紹介してあって、イラストは「痛そう」の域を完全に超えていた。 実例として描かれている、男性自身が先端から数センチ中ほどまで二股に分かれてしまっているイラストを見た時は、本当に目まいがした。 完全に理解の範疇を超えていた。 プリントを閉じて、悩んでしまった。 こういった事を行う人々の、その行為における「ヨロコビ」のピークは、一体どこなのか。 穴を開けたりする瞬間のドキドキ? 直後に「痛ーい」って感じた時? それとも、体を改造したという達成感? しばらく悩んでみたが、やはり自分の中には答えを出す材料が無いことを知り、考えるのやめにした。 だが、人とは悲しいことに、目の前に不可解が現れると、無意識に「解」を求めようとしてしまうものだ。 何故?いやわからない。でも何故?と不毛な思考が空回りしていた。 精神的ダメージが過ぎて、本当に疲れてきてしまった頃、列は進み、先頭から10人分くらいには用意されている椅子に座れるようになった。 どっと腰を下ろして呆然としていると、目の前のテーブルの脇にある椅子に、一人の男性が座った。 ワタシは顔を俯けていたが、その男性が確実にこちらに視線を向けているのを感じた。 疲れていたのでそれも無視していたら、その男性は「穴、開けるンすか?」と、ワタシに話しかけてきた。 慌てて顔を上げ、「あ、ハイ…」と返事をする。正直、話しかけられてちょっと困惑。だってワタシは完全に異端の存在のはずだから。ここに来たのをとても後悔している、唯一の人間なのだから。 見ると、その男性は20歳前後、ストリート系ファッションに身を包んでいた。 短めに刈ったクセ毛の金髪が印象的だった。 「耳スか?」と聞く男性。そりゃ、このナリでいきなりボディーは無いだろう。 「あ、ハイ…」同じ調子で答えるワタシ。 しかし、そう問いかけてくる男性も、見たところピアスらしきものは頭部に無いようだ。 彼も、ピアス初体験か?皆が皆穴だらけとは限らないし。 なのになんだろう。この、スタジオへの馴染みっぷりは。とてもはじめてきたとは思えないくつろぎ方である。 「ピアスは開けてるんですか?」間近に居るのに無言のままでいるのも気まずく、お返しに聞いてみた。 すると、男性はおもむろにジーンズのポケットから、アメリカンドッグの棒と思われるものを取り出した。 確実に手で半分に折ったと思われ、先端から5センチくらいの長さしかない物だった。 一端が無造作にケバ立っていた。 男性はそれを、自分の鼻の、左右の穴の隔たり(鼻中隔)に、ぶっす~と差し込んだ。 どこぞの原住民の方のように。 そして彼はにっこりと微笑んで「鼻ッス。」と言った。 気が付かなかったが、彼の鼻の間には、気合バリバリのでっかい穴が開いていたらしい。 ワタシもお返しににっこり微笑んで、「ガラガラピシャッ!」と心のシャッターを完全に閉めた。 続く PR |
すげぇーよ・・・
読んでいて、ドキドキ・ゾクゾク・キュ~ン(身体の真ん中へんが)、って感じでした。
特にデリケートゾーンのあたりの話を読んでいた時に、以前尿管結石を患った際に尿の出口部分からカテーテルを入れられた時の、痛くていや~な思い出が蘇りました。。。 しかしながら、私にとって全く知らない異次元の世界の話、とても刺激的でした。 続きが待ち遠しいです! 読んでいるだけで、ぞわぞわしてきました。
私だったら買ったピアスだけ持って逃げ帰ってしまいます・・。 最後の男性との会話、なんか微笑ましくていいですね笑
【2008/11/08 11:38
WEBLINK [ ] NAME [ izumix #56a1410c35 ] EDIT 一生縁の無い世界だと思うので、こういうレポで聞けるのは非常にありがたいです。
と思っていたみのりさんがこういう状況に陥ってるという話なので人生何があるかわかりませんが。。
【2008/11/08 17:21
WEBLINK [ ] NAME [ 夢導 #55fd77dcb7 ] EDIT ≫トシさん
尿管結石ですか?!あの病気自体がすごくツライという話を聞きましたが、大変でしたね…! ワタシも以前虫垂炎の手術のため、カテーテルを入れました。 とってもとっても嫌だったです!! ≫izumix あの時逃げ出さなかったのは、多少意地を張っていたんだと思うよ。 「コワくて逃げてきたのかよ~!」って馬鹿にされるのが目に見えていたからね。 最後の会話…。アメリカンドッグの彼のことを、初めちょっとでも(仲間か?)と思ってしまったことを後悔したよ。 ≫夢導 そうよねー。少なくとも、あんな場所で穴を開けるとは思ってもみなかったわ。 ま、話のネタにはなったけどね。
【2008/11/10 18:35
WEBLINK [ ] NAME [ みのり #57551f8a12 ] EDIT いやぁ、凄い体験ですね。ホントに。
よく並んでいられたと思います。 僕だったら、絶対逃げますよ。 で、買ったピアスは売ります。(^_^;; それにしても、前回に引き続き、まだ穴あけにたどり着かなかったところが、・・・みのりさん、なかなかのSっぷりですね。 完全にトシさんが悲鳴を挙げるかと思ったのですが・・・(^_^;;
【2008/11/12 20:57 WEBLINK [ ] NAME [ じめ #8d38754c62 ] EDIT |
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