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□■ 瞬間霊感少女(番外)
2007/07/31 09:00
みっこちゃんのお婆様の家から帰ってきて一週間ほど経った頃のこと。

夜12時近くに二階の自室に入り、眠りにつこうとしていた。

我が家の二階には六畳間が二つ並んでいて、境は襖で仕切られている。襖の向こうは姉の部屋だ。

寝る前にスタンドの明かりで本や漫画を読むのが習慣で、その日も部屋の中央に敷かれた布団の上で寝返りを打ちながら読みふけっていた。
4歳上の姉は私の部屋の真下にある居間で、母とテレビを見ながら談笑している。
家は木造の古い家屋のため、横向きに寝ると、下になった耳に階下の音がわりとはっきり聞こえていた。

山口での不可解な出来事を思い返すこともしばしばあった。
その日も、眠りにつこうとスタンドの電気を消して室内が暗闇に落ちたとき、ふとあの夜のことが頭を掠めた。
だが出来事自体にあまり恐怖のイメージがないこともあり、夜を迎えても過剰に怯えることはなく、(また同じようなことがあったらやだな・・・でも、ま、大丈夫かな・・)くらいの感覚だった。

暗闇に慣れると、小窓から街灯の光が入り、足元のほうの壁が微かに四角く照らされているのが分かる。

何度目かの寝返りを打ち、布団の左側にある襖に半分背中を向けかけた時、なんと金縛りにあった。

金縛りにあうのはしょっちゅうだったが、いつもは眠りから覚めるときだった。起きている時に何の前触れもなく金縛りにあうのは初めてだったのでびっくりした。

(どうしようどうしよう)と思っていると、なんと、視界の端っこにある襖が、そろそろと開いたのだ。

「!!!?!」

姉はまだ階下にいるはず。その証拠に階下からまだ声が聞こえている。いや、あの声はテレビの音なのか?

そうだ。あれはテレビの音だ。気づかないうちにお姉ちゃんが部屋に戻ったのだ。
じゃなきゃ襖が開くはずがない。
でもなんで襖を開けるんだろう。
多感な思春期の二人の間には、部屋に入るときは必ず声を掛けてからという鉄の掟があった。

開いた襖から明かりが差し込むことはなかった。姉の部屋は真っ暗のままだった。



すると。



襖から人影が入ってきた。


白っぽい人影だった。


多分白い着物を着ていたんだと思う。雰囲気から女の人のようだった。

締め付けられるような恐怖心が湧いてきた。



私の視線は足元の壁の四角い光に固定されていた。目を動かすことが出来なかったのか、怖かったからまともに見られなかったのか、今ではよく思い出せない。


その人(の様なもの)はそろりそろりと私に近づいてきた。

(来るな!)と思ったが、”それ”はすぐ側で立ち止まり、私を見下ろした。

そして、あろうことか、私の傍らに寝そべったのだ。



あまりの恐怖で自分の呼吸が荒くなってくるのが分かった。


寝そべりながら、上体を半分起こして私の顔を覗き込んできた。”それ”に近いほうの背中半分に鳥肌が立っているのがわかる。

直視していないのに、”それ”が薄笑いを浮かべているのが感じられた。怖がっている私を見て楽しんでいるかのようだった。



「お姉ちゃん?」私は声を絞り出した。

お姉ちゃんであってほしい。いや、きっとお姉ちゃんなんだ。私を怖がらせようとしているんだ。
そうじゃなきゃ説明がつかない。

すると、”それ”は私の顔のすぐ近くで「ぅんん?」と言った。

この声を聞いた時、私の恐怖は頂点に達した。あぁ、やっぱりお姉ちゃんじゃない。
なのに私は、またも無意味な問いかけをしてしまう。

「お姉ちゃんだよね!?」
ていうかなんなの?何が起こっているの?
半泣きの悲痛な叫びだった。

”それ”は「ぅん?う~ん。」完全に含み笑いの返答。



(もう嫌だ助けて!!)と思った瞬間、不意に金縛りが解けた。

右側へ寝返りしかけという不自然な状態から一気に解放され、ゴロンと仰向けになった。
もちろん、すぐ側に添い寝していたはずの”それ”はいなくなっていた。

はじかれるように布団を飛び出し、階下の居間へ。
戸を開けると姉と母がいた。

「お姉ちゃん、今、上に来た?」一応聞いてみた。
半べそかきの私を「はぁ?」という表情で見上げる二人。
「行ってないけど?」予想通りの悲しい返事だった。


二人に大まかに自室での出来事を話したが、哀れみに満ちた眼差しで寝ボケただけと片付けられた。


極限の恐怖を味わったのに端っから寝ボケと決め付けられてしまうと、かなり癪に障る。
だが、部屋に戻りながら冷静になって考えてみる。
山口での出来事は、毎晩見続けたこと、対象を直視したことなどから、私としては錯覚や夢でなかったと言いきれるので、それと比較検討してみると、まず前回なかった金縛りというのが、何だか「いかにも」という感じで変だ。体と脳の知覚バランス的なモノが崩れていたに違いない。
しかも今回は”それ”が視界の中に入っただけで、はっきりとは見ていない。
また、あの一件以来、明らかに私には怯えや不安があった。そういったことが引き起こした夢のようなものだったと考えたほうが自然ではないか。


ゆえに、この出来事は私としても『気のせい』で処理することとなった。霊的体験にはカウントされていない。


そう、気のせい。





そう思うことにしたのに、何故かその翌日、おばあちゃんの部屋から般若心経のお経を持ち出して必死で覚えた私。

その夏の間、夜、嫌ぁな雰囲気を感じると覚えた般若心経を必死で唱え、(私には何の力もありませぇん!だから来ても無駄です!!)と念じ続けるようになった私。



あまりの恐怖のため、理屈とは裏腹な行動に出てしまった。
そのおかげかどうかは分からないが、こういった出来事は以来一切起きていない。






                         おしまい。
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