次の日、僕らはのんびりパッキングを済ませ、
試合の主催者が用意した車
（といってもダンスをやってる若い子がバイトでマイカーを出している感じ）
に乗り込み、空港へ向かった。

この帰りに使う空港は、ミラノの「マルペンサ」という大きな空港ではなく、
市街に割と近い「リナーテ」という空港だ。
主に国内や近距離の国外に飛ぶ時に使う空港なんだそうで、
日本で言う羽田のようなところ。

送ってくれた男の子は学生くらいの子で、
ダンスはやっているがまだまだIDSFの試合に出るほどのレベルではないそうだ。
あまり英語も得意そうではなく（まあそれは自分も同じだが）特に会話もなく空港へ到着。
彼に挨拶と握手をして空港内へ入った。

空港はホントに狭く、さっきは羽田のようなところと言ったが、
ターミナルの内容は日本の地方空港より劣る。

仕方がないので、荷物を預けた後、カフェ（バール）に行き、
イタリア最後のエスプレッソを注文。

それにしてもエスプレッソに関しては美味い。さすがだ。




...しかしこのホッとしたひとときの後、とんでもないことが起こり得ようとは...。



しばしのんびりした後、搭乗口へ移動。
まだちょっと早かったのか、人もまだあまり居ない。

仕方がないので、自分はＤＳでドラクエをしながら暇をつぶすことにした。

こういう時にＲＰＧをするのは、本当に退屈しのぎになっていいのだ。
今回この旅で、僕はドラクエ５を始めていた。
今のところ割とゲームバランスも良く、スイスイ物語が進むのでとても気持ちがいい。


・・・・

しばらく経って、見渡すと人も増えていた。
もうすぐ出発時刻である。
が、たいがい遅くとも10分前にはゲートがオープンするもんだが、
まだオープンする気配がない。

さすがはイタリア。
そんなことを思いながら、またゲームに戻る。
（まあ、ちょっとくらい遅れても乗り換え時間はとってあるからな...）と思いながら。


僕らはこのリナーテからアリタリア航空に乗ってフランクフルトに飛び、
約３時間強の乗り換え時間をもってＡＮＡで成田へ向かうことになっていた。

すると表示が「２０分遅れ」と出た。

「ハイハイ、構わんけど早くしてくれよ」、と思いながらまたドラクエ。

昨日の列車遅延もあるし、こんなもんだろうと考えていた。



しかしその時間が近づいても、ゲートもオープンしてないし
飛行機も来ていない。


...おかしいなぁ。大丈夫か？


と思ったころ表示が「４０分遅れ」に。





...まあ３時間強乗り換えみてるからな...。まだ大丈夫かな。
と思いつつ、ちょっと不安になる。

なんせ、なんで遅れているのか、のアナウンスが全くないのだ。
天候か？飛行機の点検か？それとも何か別の理由か？？

待合室の人々もちょっとイライラし始めているようだ。



・・・が、またその時間に近づくころ、表示が変わった。


「１時間５分遅れ」




フランクフルトまでの飛行が約１時間。
そろそろヤバいんじゃないの？

「まーた遅れやがってしょーがねぇなぁ...」から、
「乗り換えに間に合わないかもしれない」＝「今日帰れない」となると
状況がいっぺんに変わってくる。

それはさすがにシャレにならん。

なんせ、仕事上色んな作業やイベントを縫うようにしてようやく空けた休みである。
１日でも仕事を休むわけにはいかない。
実際のところ、帰って１日溜まった仕事に目を通し、最低限の連絡を取ったあと、
その次の日には出張が決まっていた。

遅れて帰るなんて絶対にマズイ。

...まあでも、さすがにそれはないだろう...と、まだ心に少し余裕を持ちつつ、
最悪の事態を考えて行動をした方がいいかもしれないと考え始めた。


今できることは...、そうだ。

「乗り換えがギリギリになるかもしれないからＡＮＡに連絡しておこう！」


...そんなわけで、ＡＮＡのコールサービス（ヨーロッパ）に電話。

そこで、今アリタリア航空の飛行機が遅れていて、乗り換えがギリギリ、
ひょっとしたら間に合わないかもしれない。どうすればいいか？
と聞いてみた。

ＡＮＡのおねいさんは、ＡＮＡとしては今の段階では何も出来ないので、
とにかくアリタリア航空に対し、乗り換えに間に合うようプッシュしてください。
とのこと。


...ごもっとも。


しかし、それでは電話した意味がないので、もう少し粘ってみる。

「あのう、もしもですよ、もし間に合わなかった場合、
　アリタリア航空に日本まで帰れるようチケット手配させるべきだというのも分かります。
　分かりますが、そもそもその後、乗って帰れる便ってあるんでしょうか？」

すると、驚愕の答えが。

「実はですね...。今調べてみたんですが、お客様が今日の便に乗れないとなりますと、
　本日は便がないので無理なのはもちろんなんですが、
　明日も、...明後日も、フランクフルトから成田へ向かう便は、
　ＡＮＡを含め全ての航空会社で満席なんです。

　つまり、いつ帰れるか分らない状態になってしまうんです...」



ガチョーーン！



・・・マジっすか...？


　
「しかもそうなってくると、アリタリア航空は自分たちがすべきことは
　お客様をフランクフルトまで送り届けることでしかない、
　日本まで帰れるかどうかなんで知らないって言ってくる可能性も大なんです。」



えぇ・・・！？そんなヒドイ話って！！



「ええ。ひどい話ですが、あり得る話なんです。
　ですから、とにかく今はちゃんとプッシュして絶対間に合わせるように言ってください。」


こ...これは、まずい。

ほんっとにシャレにならなくなってきた。


「とにかく状況が分かったらお知らせください。このコールセンターはロンドンにあるんですが
　フランクフルトのＡＮＡにも情報を流しておきますので。」

とのこと。


ひゃぁ～～！！自分達の置かれたこのヤヴァい状況が理解出来てきたぞ！！



でも状況が分かっただけでも、ここは良かった。
それに何かと情報をくれたり相談できる相手（ＡＮＡ）がいるってことだけでも少し安心できた。


というわけで、相方に状況を伝え、ゲート横のデスクに詰め寄り
「今どうなっているのか？」
「早くしないと乗り換えに間に合わない！」と
攻撃を開始してもらった。


しかし、アリタリア航空の娘、あっさりとかわす。



「...さあね。私にも分からん」



眉毛をあげて肩をすくめるあのジェスチャー...お分かりいただけるだろう。あれだ。

ヤロゥ...ふざけやがって。





と、そうこうしていると・・・





ひょ、表示が消えた！！！



でたぁぁぁぁぁぁー！


フライトキャンセルである。



想像していたもっとも最悪なパターンになり始めた！！



おいおい、一体どーなるんだ！！？








（つづく）