2025/07/07 19:27
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2008/06/03 01:27
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私が新入社員の頃の話だ。
研修期間を終えた私たちは、それぞれ各部署に配属された。各部署、とは言っても、総務経理に配属された女性二人を除く男性10人は全てが営業部。ざっくりと千葉(主に柏)・東京(三鷹)の2店舗に分けられた。 いざ、社会人。いざ、営業マン。 学生生活にどっぷりと首まで浸り、いや頭まで潜り込んだ挙げ句体質がエラ呼吸にさえ変化しつつあったような私。社会に出るということは、まるでとろんと甘く暖かい海の中から、いきなり空気の希薄な高山に移されたようなものであった。この息苦しさと言ったらどうだろう。 そういった生理バランスの不順が故か、あろうことか私は配属後始めて行われる本社での全体朝礼に遅刻するという失態を演じた。全員でラジオ体操をやっている最中の事務所正面入り口に汗だくで登場した私は、体操終了後の社長訓示を役員席の前に正座しながら拝聴するという得難い栄にも浴した。朝礼終了後、三鷹の営業所に戻った私が店長からしこたま叱られたのは言うまでもない。 さて、それはよい(←よくねぇよ)。私は社会で用いられるある言葉について話そうと思っている。 事務所には、さまざまな所から電話が掛かってくる。業者・取引先・本社からはもちろんだが、ここは営業所であるから、直接お客様からの電話が掛かってくることが多い(そのころは未だ携帯電話利用者は少なかった。私が勤め始めた翌年、爆発的に普及した)。業者や本部の人間と区別するわけではないが、お客様となれば当然電話の応対に格別の注意を払う必要がある。 営業マンであるないに係わらず、ベテランかルーキーかに係わらず、事務所に居る限り電話を取る。電話の応対については研修期間に少し練習したが、さわり程度のこと。こう言ったものはオンジョブトレインしていくほかにない。店長や先輩から、少しずついろいろと教わった。電話を受けるのが最初は怖かったが、誰から誰に何についてという要諦さえ押さえればまず問題はない。すぐに慣れた。言うまでもなく、この程度のことに慣れないでは仕事にならないのだが。 ある日、私はいつものように電話を受けた。 「ハイ、●●でございますね。少々お待ち下さい」 「…●●さん、府中市の▲▲さんからお電話です」 なんてことはない会話である。先輩の電話が済んだ後、私の取り次ぎを見ていた店長がおもむろに言った。 「モロタ(会社ではモロタと清音で呼ばれていた)、さっきの電話な、 『少々お待ち下さい』じゃなくて『すこしお待ち下さい』にしなさい」 新入三等兵である私はすぐさま「ハイ、判りました!」と答えた。が、ハテ、「少々」と「少し」にどんな違いがあるのだろう?…注意して聞いていると、確かに先輩達は皆「少しお待ち下さい」と言っている。私は店長に尋ねた。 「店長ォ、何で「少々」じゃなくて「少し」って言うんスか?」 「何でだと思う?考えてみろ」 店長は私たちを大変かわいがって呉れていた。ただ教えるのではなく、考えさせるのが彼なりの親心であったのだろう。デキの悪い三等兵はしばらく考えた後答えた。 「わかりました。“スコシ”のほうが“コ”とかあるから響きがイイからだと思います」 「・・・。そう思うか?」彼は期待したラインから大きく別の方向に外れた答に一瞬戸惑ったようだ。先輩達はクスクス笑っている。 店長は教えてくれた。 “少々”の後には、ネガティブな言葉が続くのが一般的だ。“すこし”という言葉ならば、純粋に“少し”という意味のみを表わす。電話口の人を「待たせる」のだから、“少々”と言ってしまうことは、多くの時間を待たせてしまうことをあらかじめ断っているようなものだ。もちろん、待たせることは失礼なこと・・・とは言ってもしょうがないこともあるけどナ、取り次ぎは努めて素早くしなければならないだろう?その姿勢を表わすには、“少し”の方が適当なのだ。 私は大変に感心し、あの日からずっと、「ハイ、少しお待ち下さい」と言い続けている。 タイトルの『少々』には、大変にお待たせてしまったオレのイカンな気持ちが含まれている。 次回は頑張ります。許して。 PR |


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